ポケトークの効果的活用法
Nov 23, 2022/ 更新日:Jan 20, 2023
独学で英語を身につけようとするときに、一番悩ましいのが、いかにしてモチベーションを保ち続けるかである。「動機(モチベーション)の維持」である。 精神論はここでは語らず、具体的にどうすればよいのか、私なりの答えをまず述べてみたい。それは、英語を話し続けることである。
こういってしまうと、英語を話すことが求められる職種の人は圧倒的有利ということになるが、現代ではそうでない人もほぼ同様の環境を作り出すことができる。 その環境とは何か、それは「英語を話して、そのレスポンスが返ってくる」もので十分だ。ベストは生のネイティブ相手に話せる環境だが、初心者にはそのような環境がベストとは言いにくい。というのも、まず英会話上達以前に、話相手の素養に大きく影響されてしまうからである。
例えば、趣味のスポーツや模型製作などでは意気投合して、その分野の会話が少しならず上達したとしても、そのこと自体が文法力や、誰にでもわかりやすい英語を話せているかの尺度とはしづらい点が多い。
翻訳機(ポケトーク)相手に発音練習をする
私が試してみて、万人にお勧めできるのが、翻訳機(ポケトーク)相手に発音してみて、正確に自分の話した英語が文字起こしされるか、言いたい日本語に訳されたかを尺度として、練習を継続する方法である。
この学習法の欠点になりうるのは、ひたすら翻訳機相手に話すだけなので、実際の会話では相手の表情を無視してしまう会話を習得してしまうという点であるが、翻訳機だけで英語学習が完結するほど、独学の道のりは容易ではない。 そのため、新たに出費には、効果があるのかという不安にかられるが、この点はポイントを絞り、練習内容に気を付ければ何とでもなる。
本学習では、相手に正確に聞き取られるかどうかに神経を集中した練習をすることにあるので、本番の会話では相手を問わず会話が通じる発話ができる点に重きを置いている。
ここでは、現在最も入手しやすい「ポケトーク」を取り上げて練習例を挙げていきたい。
「ポケトーク」はソースネクスト社が販売しているハンディ翻訳機である。 英語のみならず、世界83言語(音声対応は70言語)に対応するマルチな翻訳機である。昔あったような翻訳データをROMに焼き込んだものではなく、常時クラウドにアクセスして最新のデータを拾ってくるものなので、誤訳等には随時改善される傾向にある。
ここでは、宣伝やプロモーション内容のことはともかく、英語学習に使い物になるかどうかだけにポイントを絞って見てみる。ポケトークが独学用ツールとして優れていると感じた点を挙げると、
- テキスト取り込み精度が高い
- 通信費込みなので、回線契約は不要。Wi-Fiなどの設定も不要
- ソフトウェアのアップデートで新機能も追加
- カメラ翻訳機能
- グループ翻訳
- AI会話レッスン機能
- 発音練習機能
当サイトの指針としては、翻訳機能そのものにあまり力点をおいていない。しかし、実際に訳された日本語表示を見てみると、精度の高さは確かそうである。 それよりも着目したのが、自分の英語の発話がしっかり翻訳機に捉えられるかという点で、この点は学習機としては申し分ないと判断できた。
ポケトークに英語で話してみて、正確に自分の発した英語が読み取られれば(テキスト化されれば)、その発音はネイティブにもかなりの高確率で聞き取ってもらえる。それでも話が通じないのであれば、そもそも会話の内容に問題があるなどの、内容そのもののを見直す必要があると判断できる。
ここでは、徹底的に発音をマスターする練習の一環として、ポケトークを使い倒すので、内容そのものについては触れない。
ポケトークには通信機能がある
ポケトークはクラウド型の翻訳機なので、インターネットにつながっていないとほとんど大したことができない。ネットが切断された状態では使えない代物と考えてよい。 翻訳機として販売されているものなので、外では常に通信を確保するという目的上、データ通信機能は内蔵されている。そのため、本体価格には通信費(二年間分)が含まれている。しかも海外でも使える(追加通信費等は発生しない)ので、日本国外に持ち出す人にとっては、このことを考慮するとコスパは良い。
話が少し逸れるが、ポケトークはスマホアプリの翻訳機能と似ている。しかし、両方利用して比べてみると、使い勝手の面で優位、不利がある。スマホの画面の方が大画面なので見やすいというような、物理的な面を除けば、翻訳性能そのものは Google 翻訳と似たりよったりという感じもする。細かく見ていけば、ポケトークの方が結果的によく利用するという結果になったが、金銭面の出費を抑えたい方は、スマホアプリを使うのも良い。ポケトークは徹底的に使えば、すぐにモトが取れるアイテム(通信ツール)なので、真面目に英語(言語)を習得したい方は、入手してみることをオススメする。
ポケトークWとポケトークS・S Plusの違いを見る
機種 | ポケトークW | ポケトークS | ポケトークS Plus |
---|---|---|---|
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金額 | 9,900円 | 32,780円 | 34,980円 |
幅 | 約59.8mm | 約53.8mm | 約65mm |
厚み | 約15.8mm | 約11.5mm | 約11mm |
高さ | 約110mm | 約91.6mm | 約123mm |
重量 | 約100g | 約75g | 約125g |
画面 | 2.4インチ | 2.8インチ | 8.97インチ |
解像度 | 320×240px | 640×480px | 800×480px |
バッテリー | 2200mAh | 1200mAh | 1550mAh |
カメラ翻訳 | ☓ | ○ | ○ |
AI会話レッスン | ☓ | ○ | ○ |
CPU | ARM Cortex53 Quad-Core 1.3GHz | 〃 | 〃 |
OS | Android OS 8.1のカスタマイズOS | 〃 | 〃 |
メモリ | ROM 8GB / RAM 1GB | 〃 | 〃 |
充電端子 | USB Type-C | 〃 | 〃 |
連続待受時間 | 約240時間 | 約132時間 | 約192時間 |
連続翻訳時間 | 約420分 | 約270分 | 約330分 |
充電時間 | 約135分 | 約105分 | 約130分 |
ワット時定格量 | 8.14Wh | 4.56wh | 5.89wh |
充電仕様 | 入力電圧:5V / 入力電流 2Aまで | 〃 | 〃 |
Bluetooth | Bluetooth 4.0 | Bluetooth 4.2 | Bluetooth 4.2 |
内蔵eSIM | ○ | ○ | ○ |
SIMカードスロット | nano-SIM | 〃 | 〃 |
3G対応周波数帯 | [W-CDMA] 1/2/5/6/19 | [W-CDMA] 1/2/5/6/19 | [W-CDMA] 1/2/5/6/19 |
4G対応周波数帯 | [FDD-LTE] 1/2/8/19/28b | 〃 | 〃 |
4G対応周波数帯 | [FDD-LTE] /3/5/7/8/18/19/20/26 | [FDD-LTE] /3/5/7/8/18/19/20/26 | |
4G対応周波数帯 | [TD-LTE] 38/39/40 | [TD-LTE] 38/39/40 | |
GPS | ☓ | ○ | ○ |
Wi-Fi対応周波数 | IEEE802.11a/b/g/n | IEEE802.11a/b/g/n | IEEE802.11a/b/g/n |
Wi-Fi対応周波数 | 2.4GHz:1~14ch | 2.4GHz:1~11ch | 2.4GHz:1~11ch |
Wi-Fi対応周波数 | 5GHz:5.2GHz(W52) | 5GHz:5.2GHz(W52) | 5GHz:5.2GHz(W52) |
Wi-Fi対応周波数 | 5.3GHz(W53) | 5.6GHz(W56) | |
Wi-Fi対応周波数 | 5.6GHz(W56) | 5.6GHz(W56) |
優れていると思える箇所に印をつけた。
ポケトークには「ポケトークW」と「ポケトークS・S Plus」という、大きく2つのモデルがある。「ポケトークS Plus」は「ポケトークS」より画面が大きく、バッテリー持続時間が長いという利点がある。サイズとバッテリーの違いを除けば、大きくカメラが搭載されているかどうかという違いしかない。通信機能も、後発の「ポケトークS・S Plus」の方が対応バンド幅が広いが、この差が活きる状況は多くない。Wi-Fi対応周波数も、W56など対応していると安心はするが、本機は主に eSIM での 4G を使うので Wi-Fi のそれほどお世話になることはない。なったとしても、W52 だけで十分対応できるケースが普通である。
公式サイトによると、CPUやメモリはどのモデルも同じものが搭載されている。価格の安いポケトークWが翻訳機能として劣っているわけではないので、ここは留意する必要がある。
「ポケトークW」はキャンペーン等を利用すれば一万円以下で入手できるが、できれば「ポケトークS・S Plus」のどちらからか選んだほうが良い。カメラ機能もそうだが、少しでも画面の解像度と大きさがある方が、文字は読みやすくなる。「S」と「S Plus」については、バッテリーの持ちに違いがあるが、大は小を兼ねるという単純な比較ではなく、どちらの方が自分としての使用頻度が上がるかという視点で選ぶと良い。 私の場合は、小さなポケットにストラップを付けて収めているので、「S」の大きさが一番ストレスなく感じた。その分、バッテリーの持続時間に不安があるが、モバイルバッテリーや、スマホからバッテリーを拝借して切り抜けている。 付属の充電器は iPhone 付属のもの同様コンパクトなので、持ち運びには気にならない。最近の Android スマホをご利用なら、Type-C ケーブルは付属品一つで済ませられる。
カメラ翻訳を使わない、多少のボディの太さは許容できるなら「ポケトークW」も悪い選択ではないが、手に持った感じは私としては「ポケトークS」の方がしっくり来た。売りになっている翻訳はインターネット上のAIが行なうのため、通訳性能はどのモデルでも変わらない。
本サイトとしては、AI会話レッスン機能(英語、中国語)が付いているのが「ポケトークS・S Plus」なので、こちらの機能が利用者として使い物になるなら、こちらを選ぶほうが利口ということになる。
ポケトーク で英語学習の具体的ステップ
ポケトークは中国語学習にも強いそうだが、本サイトとしては英語に特化して、具体的内容を見ていくことにする。 ポケトークにも申し訳ないが、日本語を英語に訳すプロセスは、試していて楽しいが、英語学習としてはこちらの機能はなおざりで良さそうである。
学習者としては、ひたすらポケトークに英語で話して、きちんと英文が認識されるかどうかに注力した方がよい。
ポケトークに英文を投げかける
公式サイトにある例文で試してみる。
公式サイト例文
例文 こちらの美術館のチケットは大人が1,500円で、3歳以上の子供が500円です。2歳までのお子様は、無料でご入場できます。
翻訳結果 翻訳結果 Tickets for this museum are 1500 yen for adults and children over 3 years old are 500 yen. Children up to 2years old can enter for free.
公式サイトの例では、例文の日本語を投げかけると、例のような翻訳結果になるとのことだが、翻訳結果を逆にして試してみた。つまり、私が英語で話しかけ、きちんと訳せるかどうかを見てみると、
以下の翻訳元言語は私がそれっぽく発音したものをポケトークがテキスト化した結果である。翻訳先言語はポケトークがAI翻訳したもの。
翻訳元言語:英語(米国) 翻訳元言語:英語(米国) Tickets for museum, 1500tm for adults and children, over 3 years old, 500gm Tuesday up to two years old can enter for free.
翻訳先言語:日本語 博物館のチケット、大人と子供のための1500tm、3歳以上、500gm火曜日は2歳まで無料で入場できます。
残念ながら、私の「yen」の発音がまずかったのか、変な単位に認識されてしまった。驚いたのは、あくまで「円」という単位が誤認識されただけで、文章の構造は普通に解析されている点である。なお、実務では、この文の場合、「円」と額面がいちばん重要なので、しっかり発音する必要がある。実際には、このような場面では料金の額面に神経を集中すると思うので、少々発音がおかしくとも、日本が場面なら「円」に、米国なら「ドル」に聞き手の脳内で解釈してくれるとは思う。
ポケトークの会話レッスン機能を使う
機械相手の発音練習ではあるが、客観的な発音練習になるので、気分がのる、のらないに関わらず練習できる。 会話レッスン機能は、ちょっとした合間にできるおしゃべりソフトという印象である。英会話中級者にとってはシチュエーションが少し物足りない気がするが、初級者にはこれでも多めの課題である。
端的に発音を真似して終わりというものではなく、自分の英会話によって画面の切り替わりが異なる。かつてのPCのアドベンチャーゲームの会話版という感じになる。
ポケトークで遊ぶ
ポケトークはAIクラウドで翻訳してくれるので、特に英語に関しては翻訳エンジンの進歩が凄まじい。数ヶ月すれば、昔はまともに訳せなかったような文も、意味の通るような訳に進化していたりする。これは頼もしい限りだか、学習に関しては、ひたすら自分が英語をポケトークに話して、どう訳されるかを楽しむという感じになる。
というのも、所詮は機械の日本語なので、外国人から見たら上手な日本語でも、日本人からしたら機械翻訳臭さが出てくるからである。 そのため、「この日本語がどのような英語に訳されるか」という好奇心でポケトークを試すのは楽しくて学習の助けにはなると思うが、あまりにも文学的な日本語は当然まともな英語にはならない。
ここで、川端康成の『雪国』がどのレベルまで意味の通る英語になるか、ちょっとお遊びをしてみる。
まず、お手本の翻訳から
川端康成『雪国』
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
サイデンステッカー(Edward George Seidensticker)氏の妙役 翻訳結果 The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky. The train pulled up at a signal stop.
教養のある人間(サイデンステッカー教授)が訳すと短くて綺麗になる。知性のみなぎる文章で、この文章を日常会話で使うと、おそらく付き合いづらい人、話がわかりにくい人という印象で伝わるはずだ。ここまでシンプルに妙訳されると、会話を返す方もそれなりの話者力を要求され、返事する側のプレッシャーになる。
主語が出て来ず、複文、重文とも取りかねる名文を、高々機械ごときに名訳されてたまるものかという気持ちがあることを、予め告白しておく。
『雪国』
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
ポケトーク訳翻訳先言語:英語(米国) After passing through a long tunnel at the border, the train stopped at a traffic light with a white bottom on a snowy night.
ポケトークがこの名文の意味をしっかり捉まえていることに驚いた。英訳は悪くないと思う。”a traffic light with”のあたりにイマイチ感(減点ポイント)があるが、心情などあるはずもない機械がここまでできることには驚く。
では、サイデンステッカー氏の英訳は、どう日本語に訳されるのか。早速、自分で読み上げて検証する。
丁寧に発音してみたが、どうしてもポケトークは私の発音を、以下のように認識する。何度か試したが、”The Earth”と”lay”で文が切れてしまう判断がされる。
The train came out of the long tunnel into the snow country. The Earth. Lay white Under the night sky, The train pulled up at a signal stop.
もしくは、
The Earthly white Under the night sky, The train pulled up at a signal stop.
という感じに認識され、ネイティブ米国人にこの部分だけ読み上げてもらったが、よく似た誤認識になった。
全体を読み上げて、ポケトークしたが、「列車は長いトンネルを抜け、雪国地球にやってきた。 Lay white 夜空の下で。」や「地上の白い夜空の下、電車は信号で停車した。」みたいな訳になり、意味そのものはわかるレベルである。
自分の発音を矯正するつもりで何度も読み上げ、それでも誤認識し続けるので、ネイティブ二人を巻き込んでの確認であったが、例文が良くなかった。このような技巧的な文は訳せるだけマシと割り切るのがいいと思う。
サイデンステッカー氏の英訳
The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky. The train pulled up at a signal stop.
ポケトーク訳翻訳元言語:英語(米国) 列車は長いトンネルから雪国フィーバーに出て、夜空の下で真っ白になりました。列車は信号停車場に停車した。
訳はイマイチだが、意味はわからなくもない。
ポケトークは翻訳機として使えそうか?
ポケトークを、全く英語のABCも知らない人が使うと、意思伝達のツールになるのかと言う点は、「簡単な会話なら十分に使える」という程度にすぎない。英語を身に着けたい人にとっては、翻訳機としてよりも、英語練習ツール、発音練習ツールとして使うのが正しい。入国管理やハンバーガーや、バスのチケットを購入したりする会話は完璧にこなせるが、それ以前に入国管理のプロセスを予め知っていて、食べたいハンバーガーの種類、バスの乗り場にどう行くかなどの知識がないと、翻訳機を使う以前の問題にもなる。翻訳機として使うには、完全に受け身の状態で使う事になりそうである。
そもそも、当サイトに興味がある人が、日常会話でポケトークに頼らなければならないことは限られている。一方で、ポケトークはネイティブの発音速度と、語と語のリエゾンにも騙されず英語を聞き取ってくれる。そのため、学習者が発音練習をするのにもってこいのツールなのだ。
一方、翻訳機としては、むしろ英語以外を母国語としている人の言葉を理解するのに助けになる。英語は米語、英語、豪語から、インド、ニュージーランドまで発音が異なるので、極端な話、米語と英語ネイティブ以外の英語をポケトークでチェックするようなツールとしても有効である。
また、中国語やアラビア語などの翻訳機としては、そういった言語に全く精通していない者からして有益に感じる。特に中国語は、受験生時代に多少漢文をかじった人は多いであろうから、思いの外有益に活用できるように思った。