英語のシャドーイング、6つのコツと注意点
Mar 15, 2021/ 更新日:Jul 6, 2021
英語のリスニング力を鍛えるには、シャドーイングが有効である。誰でもでき、時も場所も選ばない。
シャドーイングの効果を最大限に引き出す6つのコツとその注意点を紹介する。
【コツ1】自分に最適な教材を選びぬけ!
シャドーイングに用いる教材は慎重に選ぶべきである。 自分の学習レベルにあっていない物を選んだりすれば、音声速度についていけず、返って逆効果にもなりかねない。 チェックポイントは以下の2つである。
教材選びのポイント
- スピードが早すぎたり、難解な表現が多いなど、難しすぎる教材は避ける
- 自分から見て使えそうな表現が多く使われている物を選ぶ
自分から見て難しすぎる教材は避ける理由
まず、何のためにシャドーイングを行うのか確認しよう。
効果的なシャドーイングは
- 「耳」と「口」を使って「音声」と「意味」を結びつける
- 「単語」と「文法」の知識を無意識的に使えるようにする
- 「定型表現」が自然と口から出るようにする
以上の目的をシャドーイングで達成するためである。 意味と音声を結びつけるにしても、耳も口も追いつけないほど早口で話す音源ではどうしようもない。 単語と文法の脳内で結びつけるには、自分に理解できる単語のレベルである必要がある。 例えば、金融素人が金融専門用語が飛び交う音源は、話される速度が普通であっても内容がチンプンカンプンになるものだ。 そのため、知らない単語は全体の5%以下でないと、内容に集中できないはずである。 無茶をしたとしても、知らない単語は10%を超えない程度に抑えておこう。自分が精通しているジャンルであれば、10%程度が未知であっても、文脈から意味が推測できる。
音源のスピードにも気を配ろう。 早口でまくしたてるタイプの音源(討論系)は、シャドーイングには難しい教材で上級者向けである。
一方、音の変化についても、はじめはリエゾンが多くない遅めのものから始めたほうが継続しやすい。 音源のスピードが速いと、リエゾンがかかりすぎるので、必然的に速度の遅いものを選ぶことになる。
慣れたら、段階を踏んでスピードを上げ、最終的にはナチュラル・スピードのものを使うようにするとよい。
それでも難しい教材を使いたいなら
英語の実力の底上げが目的なら、知らない単語が10%を超え、話す速度も早め、一文も長くて文法も複雑な教材で頑張るということも、できうる。 しかし、その場合のシャドーイングは意識のほぼすべてが「内容を理解すること」に向かうため、上のシャドーイングの目的のほぼ全てが達成できない。 それでも、その教材が好きだとか、愛着があるだとかいう場合は、徹底的に準備運動として音読を行うようにしよう。意味は英英辞典でキーワードを絞って調べるようにする。 普通に音読して、半分以上理解ができるようになったら(内容が自分でまとめられるレベルになったら)、そのままシャドーイングに入るようにする。
自分が使うつもりの表現が多い教材を選べ
独学で英語を学ぶ際に、最も自由がきくのが内容選びである。 学校などに通うと、自然と選ばれた教材を使うことになるが、独学の場合は、自分が使いたい、使えそうな表現が多く含まれている教材を選ぶのが利口である。
繰り返しシャドーイングを行なえば、覚えるつもりがなくても、理解できる範囲であれば、脳に英文がそのままコピーされてしまう。 そのような英文は、手とっさに出てくる英文となり、自分の強力な隠し玉になるのである。
だからといって、常用される日常会話を避けて、専門用語ばかりに走るのもいただけない。
何れにせよ、自分が使えそうな表現が含まれたものを使用すると、自然とスピーキング力とライティング力が向上するため、素材選びは慎重になるべきだ。
【コツ2】単語と文法の理解は疎かにするな!
単語や文の構造(文法)を理解しないでも、実はシャドーイングの数をこなすことで英語は使えるようになる。 英語を勉強して、あるいは仕事などで使い続けて数十年という人は、わけも分からずにシャドーイングをつづけて使える英語力にした猛者もいる。
しかし、ある程度の短期間で英語力を向上させるには、文法学習に時間を費やしたほうが効果が上がる。 例を挙げよう。 われわれは小学校の算数で「九九」を習う。1x1が1、2x2が4とか誰もが知っているやつである。 基礎文法というのが、この「九九」のようなもので、これをベースに22x22などが計算できるわけである。 これを学ばずに、ひたすら計算練習と称してトレーニングするなら、実用レベルの計算力を獲得するには、999,999x999,999 程度までを覚えておく必要があるわけだ。確かに、これはこれで最強の習得かもしれない。 残念ながら、多くの人にそんな時間はない。
受験生でも、実質一年ほどで試験問題を解けるレベルまで底上げしなくてはならないはずである。
短期間で英語が使えるようになるには、不正確に記憶するのではなく、少なく理解して正確に記憶したものを、いかに再利用するかである。日常会話で飛び交っている英文は、単語を抜きにすれば文法的には複雑にはなりえないものしかない。
だから、英文法を理解し、他は手持ちの知っている単語と部分部分置き換えるだけで、自分のオリジナルな文章を組み立てるのである。 この理屈は、受験英作文を経験した人にとっては耳が痛いことかも知れないが、英会話においてもこのことは全く同じなのである。あえて言えば、違いは瞬間的に作文する必要があるということ、そのため日本語を介さないほうがテンポが良くなることなどである。
話を戻す。 シャドーイングを行う時は、単語や文の構造が脳内で自然に展開される必要がある。 “apple”と聞こえれば、脳内でリンゴか iPhone が想像できればいい。 それすらできないまま、シャドーイングもどきを繰り返しても、せいぜい発音が多少よくなる程度しか期待できない。 肝心のリスニング力で、音は聞き取れても意味がわからず、返す文が組み立てられないというブザマなことに陥ってしまう。動物の鳴き声を、感覚的に真似しているのとそう変わらなくなってしまうのである。
話される文そのものの構造、使われる単語を理解していれば、それだけシャドーイングの効果は高くなる。 内容が理解できるので、単語とその並べ方(文法)が頭に定着する。 英語の語順のまま理解できるため、日本語を介する必要がそもそもなくなるのである。
だから、くどいようだが、自分にあった素材選びはとても大切なのだ。
【コツ3】音源の発音は、執拗にそっくりにマネろ!
シャドーイングで発音学習の効果を上げるには、音源の発音をそっくりにマネる練習をすることである。 ここのツメが甘い人は、例外なく発音が甘い。
母音と子音、単語のアクセントの位置、リエゾン、リズム、イントネーションとスピードをデッドコピーするのである。
そのコピーが正確であればあるほど、リスニング力は向上する。 自分が発音できる音、つまり真似できる音は、必ず聞き取れるのである。
シャドーイングで、ヒトマネをすることに抵抗がある、プライドの高い人は要注意である。 教授職にあるような人は、そういったデッドコピーに抵抗を感じる人が多いようである。 そのような人は、マネをしたい話し手の音源を選ぶと良い。
例えば、好きな映画のワンシーン、俳優が話すシーンなどをキャプチャして、何百回とトレーニングすることもありである。 (映画のキャプチャは、初心者には変な発音をマスターする原因になりかねないので、あえて奨励はしない)
尚、本当にシャドーイングでデッドコピーができる人はそう多くない。 完璧に真似ようとしてもその半分程度しか真似ることができていないものである。 もし完璧にこのタスクを遂行できるようなら、モノマネの才能があるはずなので、そちら方面で荒稼ぎしても面白いだろう。
【コツ4】目的と効果を意識せよ!
シャドーイングは、筋トレと同じである。どこの筋肉を鍛えたいのか意識することで、変なところに力が入らなくなり、必要なところに負荷をかけられるようになる。
つまり、シャドーイングの目的を意識して実践することで、明らかに効果が変わるのである。 何のためにやっているのかわからない、やらされていると感じているのでは、シャドーイングはただのうさぎ跳びのようなもので、せいぜい根性ぐらいしか鍛えられないトレーニングに成り下がってしまう。
【コツ5】シャドーイング途中で中断するな!
シャドーイングは英語脳を獲得するための手段でもある。 英語というツールを自分に取り入れるための儀式のようなものでもある。
シャドーイングの途中でついて行けなくなったとしても、口でモガモガ呻くだけであっても、絶対に途中諦めたりしてはいけない。一旦走り始めたシャドーイング・トレーニングは、飛び始めた飛行機と同じである。途中でエンジンを切るような馬鹿な真似はしてはいけない。
シャドーイングの途中で諦めると、実際の会話で尻切れトンボ的、尻つぼみの会話をする傾向が表れやすい。 会話で内容共々に息切れを起こす症状が出るのであるる。 シャドーイングは、中途半端な形で実践すると、悪影響をもたらすこともある。そのため、最悪でも、たとえ根性のような英語とは直接関係ない能力であっても獲得したほうが良い。 シャドーイングを始めたら、とにかくやりきるのだ。
シャドーイングを途中で中断しないようにすることは、TOEICのようなリスニング試験対策にもなる。 リスニング途中で、聞き取れなかった部分、耳がついていけなかった部分に気を取られ、それ以降の会話が耳に入ってこなかった経験がある人は、特にシャドーイングを中断せずに続けることで、その対策になる。
リスニングでもシャドーイングでも、今聞こえていることに意識を集中し続けることがコツである。 聞き取れないところがあったとからといって、エンジンを止めたら墜落するだけなのである。
途中で止めて、じっくり日本語に訳して考えて、途中から聞くというようなことは許されない。 考えている間に、真っ逆さまに落ちていくだけだ。止まらずに、今聞こえてくることをそのまます繰り返す。 単純な作業ではあるが、かと言って簡単ではない。 簡単に見えてやっていることは真剣で高度なトレーニングなのである。
【コツ6】とにかく繰り返せ!
英語学習で最も重要なことは「繰り返し」である。 それは、脳に慣れさせ、覚え込ませ、英語がわかることの喜びかメリットを感じさせることでしか、脳はそれに順応しないからである。 人間の脳は、貯めている記憶や知識を使えるよう発展させるには、それなりの報酬を要求する。 その報酬というのは自分にとってのご褒美などという幼稚なものではなく、「英語が理解しながら聴けるようになった」という新規能力獲得を、脳が意識することなのだ。
報酬が見当たらない時は、ひたすら繰り返して脳に覚え込ませるしかない。 いくら頭が良くても、繰り返して脳に刺激を与え続けていなければ、英語の能力は維持できない。
話を戻そう。 シャドーイングについては、もとにかく繰り返すことである。コツはこれまで述べた6点のチェックポイントを怠らなければそれでいい。
では、どれくらい繰り返せば効果が出るのかということが気になるはずだ。 もちろん、使用する教材の難易度や集中度によって、その効果の出方は明らかに変わる。
一概に言うべきではないのだが、目安としては250回程度を想定すれば良い。 これは、平均的な俳優が台本を覚え込む時に読み返す回数である。
セリフそのものを覚え込むのに、200回以上は読み込み、役柄になりきるためにその倍以上読み込むというのが、名優アンソニー・ホプキンスが語っていたところである(ホプキンスの場合は、実際500回の読み込むつもりで役作りに入るが、250回ほど読み込んだところで台本がボロボロなり、撮影日になるそうである)。 オスカー俳優でもそれくらい繰り返すのだから、役作りの能力もない一般人は、もっと努力すべきということだ。
最後に、250回も繰り返す練習は嫌だという人のために、時間をかけて身につける方法を紹介する。5分程度のスクリプトであれば、5~6回、まずシャドーイングを繰り返してみよう。最初にシャドーイングした日から1週間して、最初の復習をする。その復習から2週間して2回目の復習をする、そしてさらに1ヶ月して3回目の復習を行うと、脳が忘れきる前に、脳に刺激を与えて記憶を呼び起こすことができる。
学習サイクルが長く、計画性が必要な方法ではあるが、脳科学的実験においても効果が確かめられている。
まとめ
まとめ
- シャドーイングで最大効果を狙うには教材選びが重要である
- 難しすぎる教材は避ける方がパフォーマンスは上がる
- 自分が使いたくなる表現が多い教材は、脳が活性化しやすい
手軽なシャドーイングの素材やコーチングが欲しいと思う人は、「シャドテン」を試しに利用されることをおすすめする。