英語の聞き流しは意味があるか?

Mar 16, 2021/ 更新日:Mar 17, 2021

英歌詞の音楽や、BBCなどの英語音源をバックグラウンドで流すというようなことが典型例だが、「英語の聞き流して英語を勉強しよう」的な話をよく聞くはずである。 「聞いているだけで、頭にスラスラ英文が入ってくるだとか」、挙句の果ては睡眠学習と称して、スピーカー付きの枕を高額で購入させる情弱も存在する。

しかし、はっきり申し上げる。「理解できない」英語をどんな方法であっても、聞き流しているだけでは、英語力向上の効果は期待できない

英語の音源の後に、例えば日本語訳を聞くなどして内容を理解したつもりでも、聞いている途中に単語や文の構造を理解せずに聞き流すのであれば、それも同様、英語力の向上には結びつかない

しかし、文構造を含め、たとえ日本語を介していたとしても「理解できる」英語を聞く分には、聞き流すだけだとしても、ある程度の効果は期待ができるのだ。 英語を利用できるように、自身の道具にしてして習得するには「理解できる」英語を読んだり聞いたりして、継続的に、しかも大量に自分で触れることが不可欠である。 この事実については、まともな英語教育誌から胡散臭い英語教材に至るまで反論のないところである。

英語学習の初心者ほど「聞き流すだけで英語がわかるようになる」などという文句に釣られがちである。 宣伝文句そのものに嘘がないにしても、多くの学習者にとってはこの文言を素直に受け取った通りにはならない。

念の為、上のような文言について補足する。「文の構造がすでにわかっていて、単語も聞き取れるなら、(聞き流すだけで英語がわかるようになる)」と読むか、「13万時間継続できるなら、(聞き流すだけで英語がわかるようになる)」と読むなら、この言葉は嘘でもない。要は、広告屋の売り文句である。

英語は聞き流すより、集中して聞いた方が高い効果が期待できる。至極当然である。聞き流すだけで英語が第二言語として習得できるのなら、同様にアラビア語であろうと、ヒスワリ語であろうと習得できるということになるが、そんな話は聞かないだろう。

このページでは、英語の安直な習得法については吟味しない。 追求するのは、いかに使える英語を自分のものにするかである。

英語を聞き流すことで、一体何の効果を期待する?!

先程も書いたが、「英語を聞き流す」して効果が出るケースはある。しかし、初学者や、文法もよくわからない人が、英語を聞き流したところで、コオロギの鳴き声をバックグラウンドに何かしているだけに過ぎないのだ。

「英語を聞き流す」という意味は、「意識を傾けないで英語を聞くこと」である。 歩きながら英語を聞く、料理しながら英語を聴く、考え事をしながら英語を聞く、など特に英語を必要としていないようなケースで、耳から英語の音源をインプットする行為を「英語を聞き流す」ことだと考えよう。もちろん、一時的には集中して聞く事があってもいいが、大半は神経は英語以外の別の何かに注がれている状態である。

英語ニュースを「聞き流し」ていたら、いつか聞き取れるようになるという迷信

BBC、CNNやAl Jazeeraなどの英語ニュースを聞き流していれば、そのうちに英語がわかるように、そして普通に聞き取れるようになるのかという疑問である。

「英語で行われるニュースを聞き流し続けたら、いつか英語が聞き取れるようになる」というのは、学習上級者にとっては、一応の理がある。

英語ニュースを「聞き流し」続けたら、英語がわかるようになる?
  • 英語だろうが、日本語だろうが、何を言っているのか全く理解できないものや、ごく稀に知っている単語が聞き取れる程度の英語を聞き流しても、期待できる効果はない。
  • 話される英語の8割程度の理解ができる程度の音源であれば、繰り返し聞き流すことで、リスニング力を含む英語力の向上はありえる。
  • 話される英語の9割以上の理解ができる程度の音源であれば、その英語にまつわる地力と音源が結びつけられる効果が期待できる。聞こえてくる英語の中で用いられた新しい語彙や文法項目、表現も習得することもできる。このケースでは、繰り返し聞き流すことは効果が期待できる。

 

「聞き流して英語を習得しよう」と謳う教材は効果がない?

英語と日本語訳を聞き流す教材の効果は?
  • 英語の部分で、何を言っているのか全く理解できないものや、ごく稀に知っている単語が聞き取れる程度の英語を聞き流しても、期待できる効果はない。
  • 英語を聞いた後に日本語訳を聞くことで、特定の英語表現を日本語訳の意味と一緒に暗記することはできる。これは大学受験等では有益だが、使える実践的な英語を習得するという意味ではなく、本質的に英語が使えるということとは異なる。

結論から言えば、日本語訳が含まれている教材は、日本語で解答することが求められる受験用としては有効である。 しかし、そのような方法で「英語がわかるようになった」としても、実際に英語を使う場面においては有効とは言えない。 全否定はしないが、使える英語を習得するという意味においては遠回りである。

使える英語を習得するには理解できる大量の英語に触れる必要がある!

英語を習得するには、英語を読むなり聞くなりして、大量の素材に触れる必要がある。 少量では、構文解析レベルに留まり、使える英語にはならない。 頭の中である程度までビッグデータを蓄積しないと、いざという時に使えないのである。 これは言語としての性格によるものだ。 そのため、やはり「」が問題になる。

では、量さえこなせば、英語なら何でも良いのかということが問題になる。 結論としては、量をこなしても、その英語が自分で「単語」「文法」「発音」について、自分が理解できるレベルのものでなければ、効果は期待できない。

かといって、低レベルの音源、完璧に理解できる英語を聞き続けることで使える英語力が自然と身につくかといえば、身にはつくがその効率が悪いのである。 完璧に理解できてしまう英語だと、逆に脳が怠けてしまって、英語をまじめに聞こうとしなくなるのだ。そのため、完璧に理解できるのではなく、9割5分程度は理解できる英語の音源を選ぶと、脳への刺激を継続しながら効果的に学習できる。

英語を聞き流すことそのものは、全く意味がないは言えない。 しかし、どのような英語の素材を使うかで、自分の英語力のどの部分を鍛えるのか大きく違ってくる。

適切に理解ができる素材を使い、繰り返し行う、ただの「聞き流し」でも効果は期待できる。ただし、時間のない方は、やはり目的を持ったトレーニングを積む方が、進歩は早い。

本サイトの趣旨とは逸れるので軽く扱ったが、日本語と英語を結びつける力も、大学などに合格する技術としては、「受験英語力」として一つの英語力になる。 後から、実践英語力を身につけるための礎にもなる。

まとめ

  • 単に「英語を聞き流す」だけだと、英語学習の効果が狙えない可能性がある
  • 「英語を聞き流す」だけで効果を狙いたいなら、素材を慎重に選ぶこと